Tana, Resident in Surplus Dimension / 異界の住人・タナ

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ある日、私がスペーストンネルの「境界」で遊んでいたら、どう見てもこの世の人間とは思えないタナに出会った。それは、タナが生きた人間とは違う雰囲気をもっていたし、スペーストンネルの内部では僕たちの影ができるが、タナにはそれがなかったからだ。影が映らない存在なんてバンパイアとか死んだ人間とか、要するにこの世のものではない存在だ。

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でも、よく見ると、タナは、翼竜と同じように、僕の夢によく出てくる少年だった。僕は夢の中でタナを知っていた。この調子でいけば、僕はもうすぐ翼竜にも会えるのかも知れない。タナは以前、夢の中に出てきて、僕が探していた本がパリの国立図書館にあることを教えてくれた。仕事のついでに試しに行ってみると、本当にそこにあった。だから僕はタナを特別な存在として信頼した。そして、別の日に古い写真集を見ていたら、タナが載っていた。何と、タナはこの記録によれば1850年にチェコスロバキアのプラハで死んでいた。タナは19世紀の実在の人物だったのだ。当然、僕は、大変に驚いた。そして、それ以来、僕は死者の世界の存在を信じるようになった。僕だけではなく、こんな経験をすれば、誰だって信じるしかなくなるだろう。

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私がタナに出会った日は、タナの方で用事があるということで、私に会いにきたという。17才で死んで以来、年齢はそのままで止まっているそうだ。そして、プラハで有名な人形使いの弟子をしていたそうだ。その職業のせいもあり、スペースチューブロボットやネットロボットを人間の分身として操る私たちの仕事に興味があったという。そういえば、私がパリの国立図書館で探した本も、西洋の人形についての文献だった。それで、「どんな用事があるの?」と聞いて驚いた。タナは次のように説明し、自分たちには「引っ越し」が必要で、それを手伝って欲しいと言う。

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「これまで疎遠だった現実との関係を回復したいと思います。世界の宗教が力を持っていた時代には、この世とあの世の交流は活発でした。しかし、現在では、そうではありません。ところが、人類はいま宇宙に出て行くことを計画しています。しかし、動物に深い愛情を示すあなたには理解してもらえると思いますが、人類とは、現実の生きた人間たちのことだけではありません。私たち死者もまた記憶のなかの人類として存在し、死者もまた夢を見ています。生きた人間たちが宇宙に行きたいと願うのは、私たちの夢にも影響されているのです。彼らが宇宙に行くなら、私たちも宇宙に行く必要があります。人類の進化を彼らだけに任せるわけには行きません。彼らが滅べば、私たちもその影響を受けて滅ぶことになります。 あなたもご存知のように、彼らの宇宙についての計画は、全体としては必ずしもよいとは言えませんので」。

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